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加来カントにおくれをばとら……じと……か。もう、いかん、いよいよいかん……。心臓がしびれて来た。
「わたくしの職業にも同じ必要に遭遇することはあるのです。併しマドモアセユの為めに不愉快でせう。」
「よし、行こう!」
*H.Minkowski-RaumundZeitを見よ。
自然科学に於ては、――中にもその典型的なものと見做されている理論物理学に於ては――、特殊な性質を有つ対象は例外として取り除かれる。尤も自然科学の各対象が皆同様であって異っていてはならないと云うのではない。一つの一般的法則の下に摂しられる諸現象は無論同じではなくして別々でなければならないであろう、もしそうでなければ法則の普遍性――共通性――という概念自身が成り立つ理由がない筈であるから。併しこの場合単に異るということと個別であるということとは区別される必要がある。カエサルがルビコン河を渡ったという事実は無論、他の人が之と同じくルビコン河を渡ったという他の一つの事実と同じではない、それは異った二つの事件である。併し今この事を、或る誰人でも好い二人の人間がルビコン河を渡った事件としてのみ見るならば、二つの事件は異っているにしても共通の普遍的事件の二つの場合に過ぎないであろう。渡った一人はカエサルと呼ばれたローマの将軍ではなくして偶然に選び出された人類の一員でしかないであろう。この場合のカエサルは他の何人によっても置き換えることを許さない歴史上唯一の個人としてのカエサルではなくして、向の他の一人に対して単にその人と異る処の一人の人間に過ぎない。処が之に反して歴史上の個人としてのカエサルはこの人間に対して個別な人間でなければならない。前者は云わば量的個別、後者は質的個別――それのみが本当の個性をもつ――である。両者は別である。そこで自然科学の対象は量的個別は有つであろう、質的個別に対しては歴史科学のみが関心を有つのである。事実、歴史家は或る対象が普遍的な・一般的な性質を有つ限り、之を記述するのではなく、それが特殊であり個別的であり個性を有つ限り、之を記述する理由を見出すのである。歴史科学的概念構成はそれ故個別化に基く。
B――お前はまた、いつも肥って嬉しそうな顔をしているね。
ロダンは何の過渡もなしに、久保田にかう云つた。「マドモアセユはわたしの職業を知つているでせう。着物を脱ぐでせうか。」
ソノクセ、
「なかなか夜が明けませんね。まだ星が光っていますよ。」
加来人間つていふもんは、いつたい、なんだ?つまり、解らうとする動物にすぎんのだ。解つたような顔をするな。
會は終つていた。三々五々散り行く人々のうしろで、若い長髮のいくたりかが怒濤のようなコーラスの下で踊つていた。私は幕のかげに坐つていた。
高野がそんなこと聞くの初めてだな、正直に言うとさ、オレ振られたんだ。オレがそう言うと、高野は嬉しそうな顔をして笑った。
急いで帰らねば、外出時間が切れてしまう。しかし、このまま手ぶらで帰れば、咽から手の出るほどスキ焼きを待ちこがれている隊長の手が、狂暴に動き出して、半殺しの目に会わされるだろうことは地球が、まるい事実よりも明らかである。
科学の精密性の有無はその最勝義に於て、単に数学を含むか否かにあるのではなくして、座標――一切の純粋計量幾何学は座標幾何学となることが出来る――に依るか否かで、あるのである*。処で座標は空間を代表することが出来る。というのは、もし人々が空間概念によって、質ではなくして何かの量を理解するならば――そしてそれは人々が事実欲している処である――、このような量概念の最も精密な表現が座標であるからである。そうすると吾々は今やこう云うことが出来る、科学の精密性は、その最勝義に於て、空間に依って与えられる、と**。吾々は第一に、この言葉を今までの考察の一段階として、記憶しておく必要がある。
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